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【令和9年度改定】訪問介護はどう変わる?介護給付費分科会の議論と今後の対応ポイント

【令和9年度改定】訪問介護はどう変わる?介護給付費分科会の議論と今後の対応ポイント

介護事業所を経営されている皆さまの中には、「前回の介護報酬改定に続き、今後の制度見直しが自社の経営や職員の雇用にどう影響するのか不安」「訪問介護員(ホームヘルパー)の高齢化が進み、採用募集を出しても応募が来ない」と、訪問介護事業を今後どのように維持・運営すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

現在、厚生労働省の第265回社会保障審議会介護給付費分科会などを通じ、次期「令和9年度改定」に向けた事業者団体等の意見聴取(ヒアリング)が本格化しています。

本記事では、最新の議論動向と論点を整理し、数多くの介護事業所の労務・加算申請を伴走してきた社会保険労務士の視点から、訪問介護事業所が今から備えておくべき具体的な労務管理・処遇改善策を分かりやすく解説します。ぜひ今後の事業戦略にお役立てください。

第265回介護給付費分科会の焦点|訪問介護向け「令和9年度改定」への団体要望とは?

社会保障審議会介護給付費分科会とは、全国の介護報酬の基準やサービス提供の在り方を審議する厚生労働省の公的審議会です。

第265回分科会では、直近の改定後の事業所経営実態やサービスごとの収支差率、物価高騰・賃金上昇の波が事業継続に与えている影響について検証が行われました。特に委員の間で活発な議論が交わされたのが、在宅生活の要となる「訪問介護」の事業所運営状況です。小規模事業所が多い訪問介護では、他業種への人材流出や有効求人倍率の高止まりが深刻化しており、国としても現行制度の効果検証と2027年度(令和9年度)に控える次期改定に向けた骨子固めが急ピッチで進められています。(参考:第265回社会保障審議会介護給付費分科会資料)

令和9年度改定では訪問介護の基本報酬・地域差・人材不足への対応が大きな論点になる可能性があります

ただし、今回示された内容は団体からの要望や意見を踏まえた議論段階のものであり、令和9年度改定の具体的な内容が決定したものではありません。

一方で、各団体の意見陳述からは今後の制度議論における「核」が極めて鮮明になりました。

具体的に協議の俎上に載っている主要論点は以下の3点です。

 

令和9年度改定で訪問介護向けに議論される可能性があるポイント

基本報酬の見直しに関する議論

訪問介護事業者からは、サービス提供に必要なコストと現在の介護報酬のバランスについて、さまざまな意見が示されています。

基本報酬とは、介護サービスを提供した際に算定できる基本となる報酬です。事業所の収入を支える重要な部分であり、改定内容によっては経営状況に大きな影響を与える可能性があります。

訪問介護は、施設サービスとは異なり、利用者宅へ移動してサービスを提供するという特徴があります。そのため、次のような訪問介護特有のコストが発生します。

  • 訪問先までの移動時間
  • 交通費や車両の維持費
  • 人材確保に必要な採用コスト
  • 地域ごとの人件費水準

令和9年度改定に向けた議論では、こうした訪問介護特有の事情を踏まえながら、以下のような観点が検討される可能性があります。

  • サービス提供に必要な人件費とのバランス
  • 移動時間や交通費など、訪問介護特有の負担
  • 地域ごとの人材確保の状況
  • 安定したサービス提供体制を維持するための仕組み


ただし、現時点で基本報酬の引上げなどが決定しているわけではありません。関係団体からの要望と、今後正式に決定される改定内容は分けて確認することが大切です。

 

 

地域差への対応が検討課題になる可能性

訪問介護では、地域によってサービス提供環境や人材確保の状況が大きく異なります。

例えば都市部では、一定の利用者数を確保しやすい一方で、人件費や採用競争の負担が大きくなる傾向があります。

一方で地方では、利用者宅までの移動距離が長くなることで、移動時間や交通費が事業運営上の負担となる場合があります。

このように、同じ訪問介護サービスであっても、地域によって抱える課題は異なります。

令和9年度改定では、こうした地域ごとの実情をどのように制度上反映するかが、引き続き重要な論点になる可能性があります。

事業者としては、今後の制度変更に備えて、以下のような準備を進めておくことが大切です。 

  • 地域における採用状況や、人材確保の難しさを把握する
  • 人件費率や職員配置の状況を定期的に確認する
  • 移動時間やサービス提供効率を分析する
  • 現在の勤務体制やシフトの組み方を見直す

特に訪問介護では、人材確保と収益性の両立が重要になります。数字に基づいて現状を把握することで、具体的な改善策を早期に検討できます。

 

処遇改善加算への対応も重要

職員の賃金改善を継続的に管理する仕組みづくり

介護業界では、人材確保のために職員の処遇改善が重要な課題となっています。

「介護職員等処遇改善加算」とは、介護職員の賃金改善を目的として設けられた加算制度です。また、医療・介護分野ではベースアップ評価料など、職員の給与改善を目的とした仕組みも導入されています。

これらの制度では、単に加算を取得するだけではなく、事業所として実際の賃金改善まで適切に運用する体制を整えておくことが重要です。

例えば、次のような点を整理しておく必要があります。

  • 対象となる職員や配分方法を明確にする
  • 職種や役割、経験などを踏まえた賃金体系を整理する
  • 基本給や手当など、どの賃金項目で改善するかを明確にする
  • 必要に応じて就業規則や賃金規程へ反映する
  • 職員へ制度の内容や考え方を説明する

特に処遇改善に関する取り組みは、職員の待遇だけでなく、「会社がどのように人材を大切に考えているか」を伝える機会にもなります。

明確なルールづくりと丁寧な説明を行うことで、職員の納得感向上や定着につながり、結果として安定したサービス提供体制の構築にもつながります。

     

    訪問介護事業者が確認すべきこと

    今からできる3つの準備
    1. 人件費と収支状況を把握する

    まず取り組みたいのが、自社の経営状況を数字で正確に把握することです。

    定期的に以下の項目を確認しましょう。

    • 人件費率(売上に対する人件費の割合)
    • 職員1人あたりの訪問件数・稼働状況
    • 処遇改善加算など各種加算の取得状況
    • 採用状況・離職率・定着状況
    • 訪問先への移動時間や移動にかかるコスト
    • サービス提供以外に発生している業務負担

     

    制度改定への対応では、他社の動向だけを参考にするのではなく、自社の数字をもとに「どの部分を改善すべきか」を把握することが大切です。

    例えば、「人件費が高い」という場合でも、単純に人件費を削減すればよいとは限りません。訪問件数や移動時間、職員配置などをあわせて確認することで、どこに改善の余地があるのかを具体的に検討しやすくなります。


    2. 人材不足対策として職場環境改善を進める

    介護業界では、人材採用だけでなく「定着」が大きな課題となっています。

    例えば、以下のような取り組みが効果的です。

    ◆キャリアアップ制度の整備

    職員が将来のキャリアを描ける仕組みを整えることで、働く意欲向上につながります。

    例:

    • 研修制度の整備
    • 資格取得支援制度の導入
    • 職位や役割ごとの業務内容の明確化
    • 評価制度や昇給基準の整理

     

     

    ◆労働条件の見直し

    長時間労働やシフト負担を改善することも重要です。

    例えば訪問介護の場合、移動時間の管理や勤務間インターバルなど、現場に合わせた労務管理が求められます。


    3. 専門家へ早めに相談する

    介護報酬改定への対応では、制度の内容を確認するだけでなく、給与制度や就業規則、職員への説明体制など、労務面での準備も欠かせません。

    特に訪問介護事業所では、処遇改善加算の配分方法、移動時間の取り扱い、職員の定着対策など、日常の労務管理と制度対応を同時に進める必要があります。

    社会保険労務士は、事業所の実情に合わせて、以下のような支援を行っています。

    • 処遇改善加算を踏まえた賃金制度の設計
    • 就業規則や各種手当規程の整備
    • 労働時間・移動時間管理の仕組みづくり
    • 人材確保・定着を見据えた労務管理制度の整備
    • 助成金活用に向けた社内制度の整備
    • 職員へ分かりやすく伝える説明資料の作成

     

    例えば、以下のようなお悩みがある場合は、早めに専門家へ相談することで、将来的なトラブル防止や円滑な制度対応につながります。

    • 「自社の処遇改善加算の算定区分や配分方法が適切か確認したい」
    • 「移動手当や直行直帰時の労務管理ルールを就業規則に反映したい」
    • 「職員の採用や定着につながる賃金制度をつくりたい」
    • 「令和9年度改定に向けて、今から安定した事業基盤を整えたい」

     

    制度改定への対応は、内容が決まってから準備を始めるのではなく、「変更が必要になったときに速やかに対応できる状態」をつくっておくことが大切です。

    まとめ|令和9年度改定に備えて訪問介護事業所の体制整備を進めましょう

    第265回社会保障審議会介護給付費分科会では、令和9年度改定に向けたさまざまな課題が議論されました。

    特に訪問介護向けの論点として、

    • 基本報酬のあり方
    • 地域差への対応
    • 人材不足への対策
    • 職員の処遇改善

     

    などが重要なテーマになる可能性があります。

    ただし、今回取り上げられた内容は団体要望や意見を踏まえた議論であり、令和9年度改定の内容として決定されたものではありません。

    今後、介護給付費分科会で具体的な方向性について議論が進められ、報酬や基準の内容が整理されていく予定です。介護事業者としては、改定内容が決まるのを待つだけではなく、今のうちから自社の人件費や職員配置、移動時間、各種加算の算定状況、処遇改善の運用状況などを確認しておくことが大切です。

    介護事業所の労務管理や処遇改善加算への対応でお悩みの場合は、社会保険労務士法人へお気軽にご相談ください。制度改正への備えから、職員が安心して働ける職場づくりまで、専門的な視点でサポートいたします。

    よくある質問(FAQ)

    Q1. 第265回社会保障審議会介護給付費分科会で令和9年度改定の内容は決まりましたか?

    いいえ、現時点では決定していません。

    今回の議論はあくまで関係団体からの要望や課題提起であり、今後は介護給付費分科会で具体的な方向性について議論が進められ、令和8年12月中に報酬・基準に関する基本的な考え方を整理し、令和9年1月頃に介護報酬改定案の諮問・答申が行われる予定です。現時点では「何が決まったか」だけでなく、「どのような課題が改定に向けた論点となっているか」を確認しておくことが重要です。

    Q2. 訪問介護のヘルパー不足に対して、今すぐ事業所側でできる労務対策は何ですか?

    まずは現在の賃金・勤務実態・職場環境を把握することから始めましょう。

    例えば、処遇改善加算について、自事業所が算定できる区分や要件を確認し、実際の賃金改善が適切に行われているかを整理することが重要です。そして加算額がどのように給与に反映されているかを職員に開示することが信頼関係の構築につながります。あわせて、職員に負担が偏っていないか、休暇を取得しやすいか、キャリアアップの仕組みが明確になっているかなど、職場環境全体を見直すことも人材の定着を考えるうえで大切です。

    Q3.処遇改善加算の配分ルールや就業規則の見直しは、社労士に相談できますか?

    はい、専門の社会保険労務士にぜひご相談ください。

    制度上の要件と実際の給与・勤務ルールにずれがあると、改定時の見直しに時間がかかることがあります。処遇改善加算の計画書作成や実績報告はもちろん、加算要件を満たす賃金規程・キャリアパス制度の構築、労働基準監督署の是正勧告対策までワンストップでサポートいたします。外部の専門家を活用することで、管理者様の事務負担を大幅に軽減できます。

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