保育所・認定こども園のBCPが令和9年度中に義務化へ?計画の作り方と今からできる準備
保育所や認定こども園(幼保連携型・保育所型)で、業務継続計画(BCP)の策定などを令和9年度(2027年度)中に義務化する案が示されました。2026年10月26日の第16回「子ども・子育て支援等分科会」(持ち回り開催)で、こども家庭庁が資料として提示したものです。
2026年11月4日現在、義務化はまだ決定していません。 開始日や経過措置の長さなどは今後の決定を待つ必要があります。一方、現行制度でもBCPの策定、研修・訓練、見直しは努力義務とされています。
「BCPという言葉は聞いたことがあるけれど、防災マニュアルと何が違うの?」「義務になったら何をすればいい?」という園長・経営者の方に向けて、制度案の内容と園で進めたい準備を整理します。
目次
保育所等のBCP義務化案で何が変わる?
分科会の資料2では、現在は努力義務とされている次の3項目を、令和9年度中に義務化してはどうかと提案しています。
| 項目 | 今回の提案で示された内容 |
|---|---|
| 1. BCPの策定 | 災害・感染症への事前対策と、発生時・発生後の対応を計画に記載する |
| 2. 職員への周知、研修・訓練 | 計画を共有し、役割分担や優先業務を練習する。年1回以上の実施が要件イメージとして提示されている |
| 3. 定期的な見直し | 訓練で分かった課題などを踏まえて計画を検証し、必要に応じて変更する |
対象として明記されているのは、保育所、幼保連携型認定こども園、保育所型認定こども園です。今回の義務化案では、幼稚園は対象に含まれていません。幼稚園は学校教育法に基づく学校であり、保育所とは法的な位置づけが異なります。ただし、今回の義務化案の対象外であることは、幼稚園における安全確保や防災対策が不要という意味ではありません。
また、幼稚園型・地方裁量型の認定こども園や、小規模保育などの地域型保育事業についても、資料2に示された対象施設には含まれていません。これらの施設については、今後正式な基準や通知などで取扱いを確認する必要があります。
一方、対象施設がBCPの策定などに取り組めるよう、一定の経過措置期間を設ける案も示されています。ただし、経過措置の具体的な期間は現時点では決まってません。
資料2では「令和9年度中の義務化」「経過措置期間」の両方が示されていますが、具体的な施行日や経過措置の終了時期などは明らかになっていません。今後、公表される正式な基準や通知を確認することが重要です。そのため、現時点で「2027年4月から必ず義務化される」「未策定なら減算される」などと断定することはできません。
そもそもBCPとは?保育施設で必要になる場面
BCP(Business Continuity Plan)は「業務継続計画」のことです。災害や感染症で通常の運営が難しくなったときにも、重要な業務を可能な限り継続し、休止した業務を早期に再開するための事前の取り決めです。
例えば、地震で建物の一部が使えなくなったり、断水で給食やトイレに支障が出たり、感染症の流行で複数の職員が出勤できなくなったりするケースです。園児の安全を確認した後も、保護者への連絡、園児の引渡し、必要な保育の継続、再開の判断などの課題が残ります。
BCPでは、限られた職員・設備・物資の中で、何を優先し、誰が判断し、どこに連絡し、どのように復旧するかを整理します。すべての状況で通常どおり開所することを約束する計画ではありません。安全確保を前提に、休園や縮小した運営も含めて判断方法を準備するものです。
防災マニュアルや避難訓練との違い
| 観点 | 防災マニュアル・避難訓練 | BCP |
|---|---|---|
| 主な重点 | 初動の安全確保、避難、通報など | 業務の優先順位、代替手段、継続・早期再開 |
| 想定する時間 | 発災前の備えと、発災直後の安全確保・避難が中心 | 発災後に時間が経過し、職員や設備が限られる中での業務継続と、早期再開まで |
| 例 | 地震直後に園児を避難誘導する | 園舎使用不可・職員不足のときの対応と再開手順を決める |
この比較は、両者の一般的な役割を整理したものです。防災マニュアルにも事前の備えは含まれます。違いは、BCPが「職員や設備が足りない状態でも、どの業務を続け、どう再開するか」までを決めておく点にあります。両者は対立するものではありません。すでにある安全計画、避難訓練、防災・感染症対応マニュアルを確認し、保育を続ける・再開するために足りない視点を補う方法が現実的です。
義務化案の3つの取組を、園の仕事に置き換える
1. 計画を策定する:災害と感染症を想定する
分科会資料では、BCPに盛り込む要件イメージとして、備蓄品、人員確保、関係先との連携・情報収集などの事前対策、災害・感染症発生時の初動対応、時間経過や感染の発生段階に応じた対応が挙げられています。
具体的には、園舎や立地のリスク、利用できる備蓄品、職員の安否確認・参集、緊急連絡先、優先業務、保護者への連絡方法などを点検します。停電や通信障害が生じた場合の代替手段も、園の状況に応じて検討します。
感染症については、職員が複数欠勤する状況や、感染状況が変わる中での業務の優先順位も考えます。災害向けの計画だけで完結したと考えないようにしましょう。
2. 職員に周知し、研修と訓練を行う
計画をファイルに保管するだけでは、非常時に使えるとは限りません。研修は計画の内容や対応方針を理解・共有する場、訓練は計画に沿って役割分担や優先業務を実際に確かめる場、と分けて考えると分かりやすくなります。
例えば「停電し、出勤できる職員が平常時より少ない」という想定で、連絡・判断・保育体制を話し合う机上訓練から始める方法があります。どこで判断が止まったか、連絡先に漏れがないかを記録し、次の見直しにつなげましょう。
年1回以上という頻度は、現時点では分科会資料に示された「要件イメージ」です。正式な実施条件や既存訓練との関係は、今後の基準・通知等を確認してください。研修と訓練それぞれの回数、机上訓練がどこまで訓練として認められるかについても、現時点の資料では明らかではありません。
3. 定期的に見直し、実際に使える計画にする
職員配置や園児数、備蓄品、自治体の連絡先などは変わります。訓練で判明した課題に加え、こうした変化を踏まえて更新することが重要です。
例えば「代行できる職員が決まっていない」「緊急連絡先が古い」「備蓄品の保管場所を一部の職員しか知らない」といった問題を改善していきます。

今から始められるBCP準備の5ステップ
ステップ1:園にある資料を集める
既存の防災計画、安全計画、感染症対策マニュアル、緊急連絡網、備蓄品台帳などを確認しましょう。内容が重なる部分は活用し、不足分を洗い出します。
ステップ2:園ごとのリスクを整理する
ハザードマップ、建物・設備、通園経路、停電・断水への備えを点検します。感染症の集団発生や通信障害など、自然災害以外も想定します。
ステップ3:重要業務と判断・連絡体制を決める
園児の安全確認、保護者への連絡、衛生管理などの優先順位を検討し、責任者が不在のときの代行者も決めます。休園・縮小保育・再開の判断は、自治体との連携を前提に整理しましょう。
ステップ4:国のガイドライン・ひな形を使って形にする
こども家庭庁は既存のガイドライン・ひな形・研修動画を公表しています。さらに分科会資料では、令和8年度中を目途にガイドラインを改訂し、施設種別等に応じた対策水準とひな形の作成・配布を行う方針を示しています。現行版を参考に着手し、改訂版が出たら見直す進め方が考えられます。感染症については、「保育所における感染症対策ガイドライン」に、集団発生時の保育の継続等に関する記載を新設する予定(令和8年12月頃を目途)とされています。
ステップ5:机上訓練を行い、改善点を残す
「連絡する順番」「職員が少ない場合に優先する仕事」「保護者への伝え方」を想定し、小さな訓練から試します。結果を記録し、計画の修正につなげることで、書類だけのBCPを防ぎます。
今後、正式な情報で確認したいこと
今後は、正式な義務化の有無、施行日、経過措置の期間、研修・訓練の詳細条件、ガイドラインの改訂、自治体との連携に関する取扱いを確認する必要があります。
介護分野ではすでにBCPの策定が義務となっていますが、保育所等で同じ制度や減算が適用されることが決まったわけではありません。保育所等の減算や罰則が決まったと受け取れる説明は避けましょう。
まとめ:義務化の決定前でも、備えは始められる
保育所・認定こども園では、BCPの策定、周知・研修・訓練、見直しを令和9年度中に義務化する案が示されています。ただし、現時点では正式決定ではありません。
園の安全計画や既存マニュアルを見直し、職員や自治体と連絡・判断の方法を確認することは、制度改正の有無にかかわらず意味があります。まずは自園で使える資料を集め、重要業務と緊急時の役割を整理することから始めてみましょう。
参考資料(2026年11月4日確認)
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