【2025年12月29日(月)追記】上野厚生労働大臣は12月26日の会見で、労働基準法改正について「2026年度の通常国会への法案提出は現在考えていない」と表明しました。
現在、働き方改革関連法施行から5年を経て、厚生労働省の審議会で時間外労働の上限や連続勤務の規制について議論が進められています。今後は高市政権が設置した「日本成長戦略会議」の分科会でも労働市場改革が議論される予定です。
「働き方改革関連法」の施行から数年が経過し、政府はさらなる労働環境の適正化を目指して、新たな法改正の議論を進めています。特に注目されているのが、2026年(令和8年)を目処とした労働基準法の改正です。
今回の改正議論では、これまで「努力義務」であった項目の義務化や、複雑だったルールの簡素化など、中小企業の経営や実務に直結する大きな変更が予定されています。
本記事では、社会保険労務士の視点から、2026年度労働基準法改正の重要ポイントを分かりやすく解説します。経営者様や人事労務担当者様は、今のうちから内容を把握し、就業規則の見直しや勤怠管理システムの改修に向けた準備を始めましょう。
2026年改正に向けた議論の背景と全体像
厚生労働省の「これからの労働基準法制を見据えた研究会(通称:未来研)」等の報告書をもとに、現在議論されている改正案は、労働者の健康確保と多様な働き方の推進が主軸となっています。
これまでの働き方改革が「長時間労働の是正(上限規制)」に重きを置いていたのに対し、次回の改正は休息の質の確保」と「ルールの明確化」へとステップアップしているのが特徴です。
主な改正検討項目は以下の7点です。
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1. 連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止)
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2. 法定休日の明確な特定義務
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3. 勤務間インターバル制度の義務化
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4. 有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化
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5. つながらない権利に関するガイドラインの策定
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6. 副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
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7. 法定労働時間週44時間の特例措置の廃止
それぞれの項目について、実務への影響を含めて詳しく解説します。
連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止)
現行法では、休日は「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じ4日以上」与えることとされています(変形休日制)。
しかし、この「4週4休」のルールを極端に解釈すると、「最初の4週間の初日に4日休み、次の4週間の末日に4日休む」ことで、理論上48日間の連続勤務が可能になってしまうという抜け穴がありました。
今回の改正では、こうした長期連勤を防ぐため、「14日以上の連続勤務を禁止する」という明確な上限規制が設けられる方向です。
| 休日の付与 |
4週4休であれば適法 |
2週間(14日)以上の連続出勤は違法 |
| 影響 |
繁忙期に連勤が常態化している場合あり |
シフト管理の厳格化が必要 |
【社労士のポイント】
これまで変形労働時間制などで長期間の連続勤務が発生していた現場(建設業、医療・介護、繁忙期の小売など)では、シフト作成のロジックを根本から見直す必要があります。
法定休日の明確な特定義務
労働基準法では「週1回の休日(法定休日)」が必要ですが、実務上は「日曜日」や「土曜日」と特定していなくても、週に1日休みがあれば違法ではありませんでした。
しかし、労働の健康と私生活のリズムを保ちにくい問題や、「どの休みが法定休日(1.35倍の割増賃金が必要)で、どの休みが所定休日(企業の定めによる休日)なのか」が曖昧になり、割増賃金の計算ミスやトラブルの原因となっていました。
改正案では、就業規則等において「法定休日」を特定すること(例:法定休日は日曜日とする)が義務化される見込みです。
【企業がすべき対応】
就業規則等に、「休日は土日とする」だけでなく、「なお、法定休日は日曜日とする」といった明確な記述への変更が必要になります。
勤務間インターバル制度の義務化
勤務間インターバル制度とは、「退社から翌日の出社までに一定時間(原則11時間)の休息時間を設けること」です。
これまでは「努力義務(導入するように努めなければならない)」でしたが、今回の改正では、これを「義務化」する方向で調整が進んでいます。EU諸国では既に一般的ですが、日本でもいよいよ本格導入となります。
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有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化
現在、年次有給休暇を取得した際に支払う賃金の計算方法は、以下の3つから就業規則で定めることになっています。
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(1) 平均賃金方式:労基法第12条の平均賃金
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(2) 通常賃金方式:所定労働時間で支払われる通常の賃金
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(3) 標準報酬日額方式:健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額
実務上は「2. 通常賃金方式」を採用している企業が圧倒的多数ですが、ルールが3つあることで複雑化していました。
改正では、原則として「通常賃金方式:所定労働時間で支払われる通常の賃金」に原則化される方向です。
平均賃金方式や標準報酬日額方式で算定した場合の日給制や時給制で働く労働者は不利益を被るリスクがありましたが、その問題点を解消する方法となります。
副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
副業を解禁する企業が増えていますが、最大のネックとなっていたのが「労働時間の通算(合算)」です。
現行法では、本業先と副業・兼業先の労働時間と割増賃金の算定は通算管理が原則というルールがあります。
これが企業のリスクとなり、副業解禁の足かせとなっていました。
改正案では、「副業・兼業における労働時間の通算を廃止」し、それぞれの企業単位で労働時間管理・割増賃金計算を行う形へ見直されることが検討されています。
【社労士のポイント】
これが実現すれば、企業は「自社での労働時間」のみを管理すれば良くなり、副業人材の受け入れハードルが劇的に下がります。ただし、健康管理の面での「労働時間把握」の義務は残る可能性が高いでしょう。
つながらない権利に関するガイドラインの策定
テレワークやスマートフォンの普及により、休日や勤務時間外でも業務メールやチャットが届き、対応せざるを得ない状況が問題視されています。
これを防ぐため、「つながらない権利(勤務時間外に業務上の連絡を拒否・無視しても不利益な扱いを受けない権利)」について、法制化またはガイドラインの策定が進められます。
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具体策:
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時間外のメール送信ルールの策定
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緊急時以外の連絡禁止の明文化
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連絡を無視したことを理由とする人事評価の低下禁止
法定労働時間週44時間の特例措置の廃止
現在、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業場については、法定労働時間が週40時間ではなく「週44時間」とする特例が認められています。
しかし、週40時間が定着している現状や労働者の健康確保の観点から、この「44時間特例」を廃止し、全業種・全規模で週40時間に統一する方向で議論されています。
【対象となる事業者様】
小規模なクリニック、飲食店、美容室などが大きく影響を受けます。特例廃止後は、週40時間を超えた分について割増賃金(残業代)の支払いが必要になるため、人件費コストへの影響を試算しておく必要があります。
まとめ:企業が今から準備すべきこと
2026年度の労働基準法改正は、これまでの「働き方改革」の総仕上げとも言える内容です。特に以下の3点は経営へのインパクトが大きいため、早期の検討をおすすめします。
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勤怠管理の見直し: 「14日連勤禁止」や「インターバル制度」に対応できるシステムか確認する。
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就業規則の改定準備: 法定休日の特定や、副業規定、有給休暇の賃金規定の見直しが必要になる。
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コスト試算: 特例措置廃止(週44時間→40時間)に該当する場合や、インターバル導入による人員配置の変更に伴うコストを把握する。
法律が施行されてから慌てて対応すると、現場の混乱や労務トラブルを招きかねません。
当法人では、最新の法改正情報を踏まえた就業規則の診断や、実務に即した勤怠管理体制の構築サポートを行っております。「自社はどう対応すべきか?」と不安な経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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