2026年1月開始!協会けんぽの電子申請で業務はどう変わる?社労士が解説
2026年(令和8年)1月から、協会けんぽ(全国健康保険協会)への現金給付等の申請において、電子申請(オンライン化)の導入が予定されています。
これまでの紙ベースの手続きから大きく変わり利便性が向上する一方で、企業担当者が「誰が」「どのように」申請するのかを正しく理解しておく必要があります。
この記事では、社会保険労務士の視点から、今回の電子化の概要と、現時点で企業としてどう備えるべきかを分かりやすく解説します。
目次
2026年1月開始!協会けんぽの電子申請化の目的とメリット
これまで、社会保険の「資格取得届」などはe-Gov等を通じた電子申請が普及していましたが、傷病手当金などの「現金給付」に関しては、紙の申請書に医師の証明をもらい、事業主が証明印を押して郵送するというアナログな手法が主流でした。
2026年1月より開始予定の仕組みでは、マイナポータル等を活用し、これらの手続きをオンラインで行う電子サービスが開始されると発表されました。
(参考:協会けんぽ|電子申請の導入について)
電子化によるメリット
- システムチェックによるミスの防止
記載漏れなどのミスを防ぐことができたり、制度の詳細等を画面上で確認しながら入力できることから、正確な申請が可能になります。 - ペーパーレス化と事務負担軽減
申請書の印刷、記入、封入、郵送といった物理的な作業が削減されます。 - 審査状況の見える化と給付スピード向上
「今、審査がどこまで進んでいるか」をオンラインで確認できる機能や、配送時間のカットによる給付までの期間短縮が期待されます。
対象となる申請者と主な申請一覧
電子化の対象となる主な申請
主に以下の手続きが電子申請の対象となる予定です。
| 申請・給付名称 | 概要 |
|---|---|
| 傷病手当金 | 病気やケガで休業したとき |
| 出産手当金 | 産前産後休業を取得したとき |
| 出産育児一時金 | 出産したとき |
| 療養費 | 立替払いをしたとき |
| 高額療養費 | 医療費が高額になったとき |
| 埋葬料 | 被保険者が亡くなったとき |
これらは従業員の生活に直結する重要な給付金です。従業員が迷わず申請できるよう、仕組みを理解しておくことが大切です。
従業員本人が行う「電子申請」の具体的な流れ
今回の電子化において最も重要なポイントは、被保険者(従業員)自身がスマートフォン等を使って申請を行うという点です。
従業員から問い合わせがあった際にイメージを共有できるよう、大まかなフローを確認しておきましょう。
準備するもの
- マイナンバーカード(署名用電子証明書が有効なもの)
- 暗証番号(利用者証明用:数字4桁、署名用:英数字6〜16桁)
- スマートフォン(マイナンバーカード読み取り対応機種)
- マイナポータルアプリのインストール
申請のステップ
1. 協会けんぽHPの「電子申請サービス」でマイナ情報を読み込み
協会けんぽHPの「電子申請サービス」を開き、マイナンバーカードを読み取ってログインします。
2. 申請メニューの選択・情報入力
「健康保険の給付申請」等のメニューから、希望する手続き(傷病手当金など)を選択。振込先口座や申請期間などの必要事項を入力します。
3. 証明情報(医師・事業主)の登録
ここが重要なポイントです。
-
- 医師の意見書:医療機関からデータ連携される、または紙の意見書を撮影してアップロードする等の方法が想定されます。
- 事業主の証明:勤務状況や賃金情報の証明が必要です。証明の運用方法については現在準備中とのことです。
4. 入力内容の確認・送信-広報・イベント-全国健康保険協会.png)
(参考:協会けんぽ|電子申請の導入について)
電子申請に向けて事業主(会社)が準備すべきこと
現時点では、電子申請における「事業主証明(タイムカードや賃金台帳の内容証明)」をどのようにデータ連携するかなど、詳細な運用フローは決まっていません。
しかし、2026年の開始に向けて、担当者が今のうちから把握し、社内で準備しておくべきポイントがあります。
1. 「会社による代理申請ではない」ことを理解する
これまでの社会保険手続きの多くは、会社が従業員の情報をまとめて申請していました。
しかし、今回の現金給付の電子申請は、従業員本人が自分のマイナンバーカードを使って行うこと(本人申請)が基本となると想定されます。
会社側で「まとめて電子申請しておいてあげる」ということは原則できないため、「申請主体は従業員本人である」という意識の切り替えが必要です。
2. 従業員への案内フローを準備する
制度開始後、従業員から「スマホで傷病手当金を申請したいのですが、どうすればいいですか?」と聞かれるケースが増えるでしょう。その際にスムーズに案内できるよう、申請方法などを周知する準備をしておきましょう。
3. 事業主証明の方法については情報を待つ
傷病手当金等の申請には、従来通り「事業主の証明」が必要です。これが電子化によってどう変わるのか(完全にデータ化されるのか、紙の証明書を写真で添付するのか等)は今後決定される見込みです。
誤った情報を伝えないよう、協会けんぽや厚生労働省からの公式発表を注視しておく必要があります。
協会けんぽの電子申請における社会保険労務士の活用
「従業員にどう説明すればいいか分からない」「過渡期の混乱が不安」という場合は、社会保険労務士(社労士)の活用が有効です。
1. 制度の正しい周知と社内ルールの整備
新しい仕組みが始まると、従業員からの問い合わせが殺到し、人事担当者の負担が増える可能性があります。
社労士は、従業員向けの分かりやすい説明資料の作成や、申請フローに関する社内Q&Aの整備をサポートします。
2. 従来通りの申請やトラブル時の対応
電子申請が難しい従業員に対しては、引き続き紙での申請も行われる見込みです。
「電子と紙、どちらで対応すべきか」「イレギュラーなケースはどうするか」といった判断に迷った際、専門家である社労士がいれば、迅速かつ正確な実務サポートを提供できます。
まとめ
2026年1月から始まる協会けんぽの電子申請は、利便性が高まる反面、申請の主体が「従業員本人」になるなど、これまでの実務感覚とは異なる部分があります。
現段階で大切なのは、「従業員本人がマイナンバーカードを使って行うもの」という基本を理解し、いざ開始された際に社内が混乱しないよう、案内フローを整えておくことです。
「自社の従業員層に合わせた案内方法を相談したい」「最新情報が入ったら教えてほしい」とお考えの経営者様・ご担当者様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。スムーズな制度移行をサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年1月になったら、紙での申請はできなくなりますか?
いいえ、当面の間は紙(郵送)での申請も併用して受け付けられる予定です。スマホ操作が苦手な従業員や、マイナンバーカードを持っていない従業員については、従来通り紙での申請が可能と考えられます。
Q2. 会社が従業員の代わりにスマホで電子申請してあげることはできますか?
原則としてできません。電子申請にはマイナンバーカードによる厳格な本人認証(電子署名)が必要です。そのため、従業員本人が自身の端末で操作を行う必要があります。会社はあくまで、申請に必要な情報の提供や証明を行う立場となります。
Q3. 事業主の証明印は不要になりますか?
電子申請の仕組みの中で、事業主証明がどのように行われるかは現在検討中であり、確定していません。完全に電子化されるのか、一部紙での証明が残るのかなど、今後の公式情報を確認する必要があります。
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