今から備える中小企業の事業承継─無理なく進める実践ガイド
目次
はじめに
中小企業の経営者の平均年齢は年々上がり、後継者不在の不安も増えています。 でも、事業承継は「一気にやる大仕事」ではありません。 今日からできる小さな準備を積み重ねれば、ムリなく進められます。 このコラムでは、専門用語をできるだけ使わず、誰でも実践できる手順と注意点をまとめました。
事業承継とは?目的を一言で
事業承継は「社長のイスを次の人に渡すこと」だけではありません。 お客様との関係、社員の雇用、取引先との信頼、ノウハウ、社名の信用など、 会社の“良いところ”を未来につなぐ取り組み全体を指します。 目的はただ一つ。「会社を止めず、成長させる」ことです。
なぜ今、準備が必要なのか
- 経営者の高齢化で、急な引退・病気のリスクが上がっています。
- 人手不足が続き、引き継ぎに時間がかかる傾向です。
- 取引先や金融機関は、後継計画がある会社を評価します。
- 早く始めるほど、選べる方法が増え、費用も抑えやすくなります。
「忙しくて先延ばし」にしがちなテーマですが、 ”今日の1時間”が2年後の安心につながります。
主な3つの承継の方法
親族内承継
家族が継ぐ方法。社内の理解は得やすいが、適任者がいない場合はムリをしない判断も大切です。
社内承継
社員や役員が継ぐ方法。現場を知る強みがあり、教育・資金面の段取りを早めに固めます。
M&A(第三者承継)
社外の経営者や企業に引き継ぐ方法。技術や人材を守りつつ、成長のチャンスを広げられます。
★どの方法にも長所と短所があります。大切なのは「会社の将来像に合うか」です。
はじめの一歩:3か月の準備
最初の3か月で、次の4点だけ整えましょう。
見える化
主要な取引先、上位サービス・商品の売上、利益が出ている事業を一覧化。
銀行口座・借入・保証の状況を1枚にまとめる。
人の整理
キーパーソン(いなくなると困る人)を特定し、担当を複数名体制に。
手続きの棚卸し
役員変更、名義変更が必要な契約を洗い出す(賃貸、保険、各種ライセンス等)。
コミュニケーション計画
伝える順番と時期をメモ化(役員→管理職→主要取引先→全社員)。
この4点が整うだけで、「何からやるか」がハッキリします。
5年ロードマップ

1年目:現状把握と基本方針
強み・弱みの洗い出し/後継候補の仮決定/金融機関と意見交換
2年目:体制づくり
権限の分散/二重チェック体制/就業規則・人事制度の見直し
3年目:段階的な引き継ぎ
主要顧客の同席訪問/サイン権限の移管/役員構成の調整
4年目:最終準備
名義変更の一括実行/広報(社内外)/社長交代の発表
5年目:定着・改善
半年ごとの振り返り/残課題の処理/次の成長投資
※あくまで一例です。会社の規模・業種に合わせて調整しましょう。
労務と手続きのチェックリスト
承継は「人」に関わる変更が多いため、労務の漏れがあると混乱します。 以下の表を参考に、優先順位を付けて進めましょう。
| 項目 | 目的 | タイミング | メモ |
|---|---|---|---|
| 役員・代表の変更手続き | 法的な体制の明確化 | 交代前後 | 登記、印鑑、銀行届出を一括で |
| 就業規則の見直し | 新体制に合う運用へ | 体制づくり期 | 役割・承認フローを明文化 |
| 退職金・表彰規程 | 不公平感の回避 | 方針決定時 | 過去慣例の整理を |
| 人事評価・給与体系 | 権限と連動させる | 段階的 | 昇格・代行手当の設計 |
| 雇用契約書の更新 | 役割変更の明確化 | 引き継ぎ期 | 兼務・代行の期間を明記 |
| 未払い残業の確認 | 火種の予防 | 早期 | 監査的にチェック |
| 休職・復職ルール | 体制の安定 | 見直し時 | 実務で使える運用に |
| 安全衛生・委員会 | 法令対応 | 通年 | 議事録の整備 |
| 個人保証・連帯保証 | 個人リスクの把握 | 金融機関と協議 | 段階的な外しを検討 |
| 情報管理・権限 | セキュリティ確保 | 通年 | アカウントと権限の棚卸し |
お金・税金をやさしく整理
難しい言葉は避け、考え方だけ押さえましょう。
-
会社の価値は“稼ぐ力”が重要: 利益やキャッシュをどれだけ生むかで、おおよその目安が決まります。
-
承継の際の賃金調達方法はいくつかある: 現金、分割、役員退職金の活用など。資金繰り表で無理のない範囲に。
-
税金は「早めに相談」が最善策: 後から直すほど負担が増えがち。方向性が決まった段階で専門家へ。
-
補助金・支援策の確認: 事業引継ぎ支援センター等の公的支援もあります。情報だけでも早めに収集を。
M&Aを使う場合の進め方
M&Aは「会社を譲る」「会社を迎える」どちらの側でも準備が必要です。
-
方針決定:守りたいもの(雇用、屋号、拠点など)をはっきりさせる。
-
資料準備:決算書、試算表、月次の売上推移、主要契約、在庫・設備の一覧など。
-
相手探し:仲介会社や金融機関、公的機関のネットワークを活用。
-
条件すり合わせ:価格だけでなく、引き継ぎ期間や役員体制も重視。
-
確認・調査:相手に開示し、先方の確認も受ける。
-
契約・クロージング:名義変更、従業員説明、取引先の挨拶までまとめて進める。
★ポイントは「合意後の運営」まで見て話を進めることです。
よくある落とし穴と回避策
-
内々で進めすぎる: キーパーソンにだけは早めに共有。ウワサの拡散より先に、正しい情報を届けます。
-
価格だけで判断する: 「事業の相性」「文化・社員の引継ぎ」「社風」など、価格以外の条件も同じくらい重要です。
-
社長の役割が急にゼロになる: 退任後3〜6か月は「相談役」として同席し、安心感を与えましょう。
-
名義変更の漏れ: 賃貸、保険、通信、各種ライセンスをリスト化して一括対応。
-
ITアカウントの引き継ぎ忘れ: メール、会計ソフト、クラウド、SNSは権限まで点検。
よくある質問
Q1. いつから始めればいいですか?
A. 社長交代の5年前が理想です。遅くても3年前。 時間が味方になるほど、選択肢と交渉力が増えます。ただし、会社の規模・業種・後継者の状況によって変動するため、会社ごとの状況を踏まえて検討してください。
Q2. 小規模な会社でも必要ですか?
A. はい。小規模ほど、社長の不在が業務停止に直結します。 「誰が、何を、どこまで代わりにできるか」を1枚にまとめましょう。
Q3. 従業員にはいつ伝えるべきですか?
A. 方針が固まり、主要な条件に目処がついた段階が目安です。 伝える順番とメッセージを事前に決め、質問に備えましょう。
まとめ:今日から一歩を踏み出す

事業承継は、会社の“命のリレー”です。 難しい専門用語より、現場で回る仕組みづくりが重要です。 今日できることは、現状の見える化と、人・お金・手続きの優先順位付け。
私たちの事務所では、事業承継準備のサポートをしたり、ご相談内容に応じて専門家をご紹介させていただきます。中小企業の事業承継税制などの制度も存在するため、まずはご相談ください。会社の未来に、確かな安心を。
初回無料相談受付中!
まずはご相談ください。
初回無料の個別相談を実施しております。
お問い合わせフォームに「相談したい内容」をご入力して送信してください。担当者よりご連絡させていただきます。
【訪問可能エリア】
秋田県内全域(秋田市、能代市、横手市、大館市、男鹿市、湯沢市、鹿角市、由利本荘市、潟上市、大仙市、北秋田市、にかほ市、仙北市、小坂町、上小阿仁村、藤里町、三種町、八峰町、五城目町、八郎潟町、井川町、大潟村、美郷町、羽後町、東成瀬村)
【オンライン相談(Zoom、チャットなど)】
全国各地どこでもOK
※本コラムの内容は作成時点の情報に基づいています。制度の詳細や最新情報については、厚生労働省のホームページをご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。


















