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障害者雇用率は2026年7月から『2.7%』へ—企業が備えるべき実務・対応策と助成金【最新版】

障害者雇用率は2026年7月から『2.7%』へ—企業が備えるべき実務・対応策と助成金【最新版】

はじめに

「2026年7月に障害者雇用率が引き上げられるって聞いたけど、何から準備すればいいの?」「中小企業にとって、どんな影響があるんだろう…?」「今からできる具体的な対策を知りたい!」中小企業の経営者や人事担当者の皆様は、このような疑問や不安をお持ちではありませんか?

2024年4月に2.5%に引き上げられた障害者法定雇用率ですが、2026年7月1日には「2.7%」へと、さらに引き上げられることが決定しています。

引き上げまでまだ時間があるとはいえ、障害のある方の採用は、一般の採用と比べて、情報収集や求人方法、選考方法などが異なるほか、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携、障害者合同面接会への参加など、独自の採用ルートを開拓する必要があります。また、採用後は、業務に必要なスキルを習得してもらうため、OJTや外部研修などを計画的に実施する必要があり、これらの活動には、相応の準備期間と時間が必要です。
特に、中小企業にとっては、採用ノウハウや人員、予算の面で課題も多く、どのように対応すれば良いか悩ましい問題でもあります。

この記事では、2026年7月の障害者法定雇用率引き上げに向けて、法改正の内容はもちろん、中小企業が今から準備すべきこと、雇用促進のための具体的な対策など網羅的にご紹介します。

この記事を読めば、2026年7月の法改正に向けて、計画的に準備を進め、障害者雇用を成功させるための第一歩を踏み出せるはずです。ぜひ最後までお読みください。

2026年7月、障害者法定雇用率が2.7%へ引き上げ

障害者の法定雇用率は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)という法律に基づき定められています。この法律は、障害者が職業生活において自立できるよう、職業リハビリテーションの推進、事業主による障害者雇用の義務、差別の禁止、合理的配慮の提供義務などを総合的に定めているものです。

その中で法定雇用率は段階的に引き上げられており、2024年4月に、対象となる事業主は常時雇用する労働者数40.0人以上の企業となりました。さらに、2026年7月には37.5人以上の企業が対象となります。中小企業においても、より一層の対応が求められるようになります。

改定時期 法定雇用率 対象事業主(労働者数)
~2024年3月 2.3% 43.5人以上
2024年4月~2026年6月 2.5% 40.0人以上
2026年7月~ 2.7% 37.5人以上

中小企業への影響と課題

今回の法改正は、中小企業にとってどのような影響があるのでしょうか?主な課題を3つご紹介します。

採用ノウハウの不足

中小企業では、大企業と比べて人事担当者の数が少なく、障害者雇用の専門知識や経験を持つ人材が不足している場合があります。
そのため、採用活動をどのように進めれば良いか、どのような人材を求めているのか、明確に定義できないという課題があります。

人員・予算の制約

中小企業では、採用活動に割ける人員や予算が限られている場合があります。大企業のように、専門の採用チームを設けることが難しく、既存の人事担当者が兼務で対応せざるを得ないケースも少なくありません。
また、障害のある方が働きやすい環境を整備するための設備投資や、研修費用などを十分に確保できないという課題もあります。

障害特性への理解不足

中小企業では、障害のある従業員を受け入れた経験が少ないため、障害特性に関する知識や理解が不足している場合があります。
そのため、どのような配慮が必要なのか、どのようにコミュニケーションを取れば良いのか、不安を感じる従業員もいるかもしれません。
障害のある方が安心して働ける職場環境を整備するためには、社員全体の意識改革が不可欠です。

      【計算例付き】雇用率の計算方法と障害ごとの人数算定

      自社の雇用率を正しく把握することが、対策を立てる上で非常に重要です。2026年7月からの変更点も踏まえて、計算方法を確認しましょう。

      基本的な計算式

      障害者雇用率は、以下の計算式で算出します。

      実雇用率(%) = (雇用している障害者数) ÷ (常時雇用する労働者数) × 100

      具体的な人数算定と計算例

      2024年4月からの変更点として、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の特定短時間労働者(精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者)も雇用率に算定できるようになりました。これは2026年7月以降も変わりません。

      • 週所定労働時間30時間以上:

        • 身体障害者・知的障害者・精神障害者:1人

        • 重度身体障害者・重度知的障害者:2人(ダブルカウント)

      • 週所定労働時間20時間以上30時間未満(短時間労働者):

        • 身体障害者・知的障害者・精神障害者:0.5人(※精神障害者の場合は、特例措置延長により当分の間、1カウント)

        • 重度身体障害者・重度知的障害者:1人

      • 週所定労働時間10時間以上20時間未満(特定短時間労働者):

        • 精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者:0.5人

         

        ◎従業員数40名の中小企業を例に、雇用率を計算してみましょう

        • 週30時間以上勤務の身体障害者:1名

        • 週20時間以上30時間未満勤務の知的障害者:1名

        • 週15時間勤務の精神障害者(特定短時間労働者):1名

        この場合、雇用している障害者数は、1 + 0.5 + 0.5 = 2人となります。

        したがって、実雇用率は、2 ÷ 40 × 100 = 5%となります。

        この企業は、法定雇用率2.7%を達成しています。

      中小企業が雇用率を達成するための具体的な対策

      雇用率を達成するためには、どのような対策が必要でしょうか?中小企業が取り組むべき具体的な対策を3つご紹介します。

      採用活動の工夫

      • ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携:
        専門的な知識やノウハウを持つ機関と連携することで、企業のニーズに合った人材を紹介してもらうことができます。

      • 障害者合同面接会への参加:
        一度に多くの求職者と出会える機会です。企業PRや採用情報を積極的に発信しましょう。

      • インターンシップ制度の導入:
        採用前に、実際に業務を体験してもらうことで、ミスマッチを防ぐことができます。

      • 求人情報の工夫:
        障害のある方が応募しやすいように、求人情報の内容を具体的に記載し、合理的配慮の内容を明示しましょう。

      働きやすい環境づくり

      • 合理的配慮の提供:
        障害のある従業員が働きやすいように、個別のニーズに合わせた合理的配慮を提供しましょう。

      • 職場環境の整備:
        バリアフリー化、休憩スペースの確保、作業用具の調整など、物理的な環境を整備することも重要です。

      • 相談しやすい体制づくり:
        上司や同僚が、障害のある従業員の相談に親身に対応できるような体制を整えましょう。

      • 研修の実施:
        社員全体の障害理解を深めるための研修を実施することも有効です。

      障害者雇用の専門家との連携

      • 社会保険労務士への相談:
        障害者雇用に関する法的な知識や手続きについて、専門家のアドバイスを受けることができます。

      • 障害者雇用コンサルタントの活用:
        採用活動のサポート、職場環境の改善、定着支援など、総合的なコンサルティングを受けることができます。

      • 就労移行支援事業所との連携:
        障害のある方の就職を支援する事業所と連携することで、採用後の定着支援を受けることができます。

      中小企業向けの支援制度と助成金

      国や地方自治体は、中小企業等の障害者雇用を支援するため、様々な制度や助成金を用意しています。積極的に活用しましょう。

      障害者雇用納付金制度

      常時雇用する労働者数が100人を超える企業で、法定雇用率を達成できなかった場合、障害者雇用納付金を納付する必要があります。
      納付金は、障害者雇用を積極的に行っている企業への調整金や助成金の原資として活用されます。

      キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

      キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)は、障害者の雇用を促進するとともに職場定着を図るため、次のいずれかを継続的に講じた場合、助成金を受けることができます。
      ・有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する措置
      ・無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置

      以下に、具体的な金額もあわせて、ご紹介します。

      ・6カ月以上、非正規(期間の定めのある雇用)だった障害者の方を正社員に転換90万/人 ※精神障害、または重度障害の場合は120万

      ・6カ月以上、非正規(期間の定めのある雇用)だった障害者の方を無期雇用に転換45万/人 ※精神障害、または重度障害の場合は60万

      その他、各地方自治体でも、独自の助成金制度を設けている場合があります。なお、助成金や補助金については、内容・金額等に変更が生じる場合があるため、最新の公募要領をご確認ください。

       

      障害者雇用を成功させるためのポイント

      障害者雇用を単なる義務として捉えるのではなく、企業の成長につなげるためには、以下の3つのポイントが重要です。

      経営層の理解と協力

      障害者雇用を成功させるためには、経営層の理解と協力が不可欠です。
      経営層が率先して障害者雇用の重要性を発信し、社員全体の意識改革を推進することが重要です。

      社員全体の意識改革

      障害のある従業員を受け入れるにあたり、社員全体の理解と協力が必要です。
      研修や勉強会などを通じて、障害に関する正しい知識を習得し、偏見や差別をなくすことが重要です。

      長期的な視点での取り組み

      障害者雇用は、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組むことが重要です。
      採用から定着まで、継続的な支援を行い、障害のある従業員が能力を最大限に発揮できるよう、サポートしていくことが重要です。

      よくある質問

      Q1. 従業員数が少ない場合でも、障害者雇用は必要ですか?

      A1. 2026年7月からは、常時雇用する労働者数が37.5人以上の企業が対象となります。対象となる場合は、法定雇用率を達成する必要があります。

      Q2. 障害者の方にどんな仕事を任せたら良いか分かりません。

      A2. 障害のある方のスキルや経験、希望などを考慮し、適性に合った業務を担当してもらうことが重要です。
      事務作業、軽作業、清掃、IT関連業務など、様々な業務が考えられます。

      Q3. 障害のある方とのコミュニケーションに自信がありません。

      A3. 障害の種類や程度によって、コミュニケーションの方法は異なります。
      相手のペースに合わせ、分かりやすい言葉で話すことを心がけましょう。

      まとめ

      今回は、2026年7月の障害者法定雇用率引き上げに向けて、企業が今から準備すべきことを解説しました。

      障害者雇用は、企業にとって社会貢献であると同時に、新たな人材の活用や組織の活性化につながる可能性を秘めています。
      2026年7月の法改正に向けて、今から計画的に準備を進め、障害者雇用を成功させましょう。

      「うちの会社は、何から始めたら良いんだろう?」「具体的な進め方が分からない」「助成金について詳しく知りたい」など、障害者雇用についてお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。貴社の状況に合わせて、最適なご提案をさせていただきます。
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